密度行列くり込み群法と厳密対角化法を用いて、スピンギャップを示す擬一次元磁性体([1]ハルデーン系、[2]結合交替系、[3]スピンパイエルス系、[4]梯子物質)の元素置換効果を調べた。これら全てを表しうる一次元模型[次近接相互作用(パラメーターα)と結合交替(同β)を含む]を取り上げ、純粋物質及び不純物ドープ系に対する計算を行った。主な結果を以下に記す。(1)ギャップ、スピン相関長、ストリング秩序変数の挙動から、純粋物質(系のサイズL=∞)はα-β空間上で、β=1(結合交替なし)とα=∞(二鎖に分離)の場合(スピン液体相)以外は、ハルデーン(スピン固体)相に属する。(2)非磁性不純物をドープした場合(Lが有限)は、相関長や最低磁気的状態(S^z≠0)のスピン分極の挙動が、典型的ハルデーン相とスピン液体相近傍のハルデーン相の間で著しく異なる。前者では相関長や分極(磁気励起)がLには依存せず、分極は鎖端に局在するが、後者では交替磁化が全系に広がり、その振幅はLの減少に伴い急激に増大する。前者に属する[1]や[2]の物質群は高濃度のドーピングでもギャップを維持するが、後者の[3]や[4]は微量の不純物によって、ギャップが潰れて反強磁性秩序が出現する、という傾向が理解できる。(3)α-β空間上で、非整合スピン相関の存在が予測されていたが、その全貌と詳細な相図を明らかにした。量子揺らぎによる実空間と運動量空間での非整合度のずれも詳細に議論した。 次に、以上の局在スピン系の成果を基に、密接な関連を持つ銅酸化物高温超伝導体の幾つかの模型に対し、擬ギャップとストライプ構造の安定性の変分法による計算を行った。この研究は引き続き次期の研究で詳しく追求する予定である。
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