研究課題/領域番号 |
11640375
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
笠井 秀明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00177354)
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研究分担者 |
中西 寛 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40237326)
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キーワード | 原子架橋 / 量子輸送現象 / 電子相関効果 / ハバード模型 / 強磁性 / 走査型トンネル顕微鏡 / 金属表面 / 原子操作 |
研究概要 |
走査型トンネル顕微鏡の探針を金属表面に接触させた後、表面から探針を引き離していくと表面と探針間に断面の径が数ナノメートルの細線(原子架橋)が形成される。この原子架橋の伝導性や磁性は、探針操作によって架橋構成原子を動かし、変化させることが可能であり、原子架橋は新奇な物性研究の対象として興味がもたれる。この原子架橋の電気伝導に対する電子間クーロン相互作用の影響をハバード模型の枠内で調べた。 1.サブバンド間の電子-電子散乱の効果 電子間クーロン相互作用によるサブバンド間の電子-電子散乱がコンダクタンスのステップ近傍で顕著になり、伝導が阻害される。これは、サブバンド端で系の一次元性を反映して高い状態密度をもつこと。コンダクタンスのステップ近傍では、このサブバンド端がフェルミレベルに接近するため電子-電子散乱が飛躍的に増大することが原因である。 特に2つのサブバンド端が同時にフェルミレベル近傍にある場合は、電子-電子散乱の効果で電気伝導度は著しく減少し、探針引き上げに対するコンダクタンス変化にバレイ構造が現われる。一方、1つのバンド端がフェルミレベル近傍にある場合は、コンダクタンスはなだらかな減少を示す。 2.原子架橋の磁性変化と電気伝導 原子架橋の磁性が伝導に及ぼす影響を、軌道縮退を考慮したハバード模型を用いてハートリー・フォック近似の枠内で調べた。電子密度が低い場合、探針引き上げに伴い強磁性から常磁性への変化や常磁性から強磁性への変化が生じ、さらに、前者の変化では、電気伝導度がG_0/2(G_0=2e^2/h)分の変化を示すが、後者の変化では、一般に変化を示さないことがわかった。これは探針引き上げに伴う原子架橋の形状変化がもたらすサブバンド構造の変化が、サブバンドを占める電子密度に強く依存するためであると考えられる。
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