本年度は3次元古典格子模型への密度行列繰り込み群の拡張を重点的に研究した。その下準備として、周期的境界条件を持つ円筒型の2次元古典格子模型をまず考察の対象とした。なぜならば、円筒上を回る経路で情報の伝達が起こる現象が3次元古典系の情報伝達経路に似通っているからである。解析の結果、従来の予想とは異なり、周期境界条件を持つ模型の繰り込み群変換は、密度行列を直接対角化するだけでは得られないことが判明した。実は、変分関数の規格化因子を記述する「第二の密度行列」が非自明な効果を持つのである。 以上の結果を踏まえて、3次元古典格子模型の密度行列を構成する為に、変分関数の形をテンソル積型にまず限定して、その上で変文関数のノルムを保ったまま変分フリーエネルギーの極小を探す自己無矛盾な方程式を立てた。同方程式は、非常に多くの自由度を持つ非線形方程式であるので、これを数値的に解く為に設備備品として購入したAlphaワークステイションを用いて3次元イジング模型についての反復計算を行った。その結果として、同方程式が精密に熱力学関数を算出することを確認した。今後、計算精度を更に向上させる為に、より多くの自由度を取り扱えるよう改良を加えて行く予定である。
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