有限温度密度行列繰込み群(DMRG)では、有限温度の一次元量子系を表現する筒形の二次元古典系に「切れ目」を入れて密度行列を構成することが、一般的に行われている。この場合、系のトポロジーが平面とは異なるので、従来から行われて来た単純な密度行列構成が、フリーエネルギー最小の意味において必ずしも最適ではないことが判明した。その理由は、筒を「回り込む」形の情報伝達が正しく取り込まれないからである。同様な困難は三次元古典系にも現れる。 そこで本年度はDMRGの基礎に立ち返って、テンソル積で表現された変分関数を改良するという視点から、三次元古典系に対する有効な密度行列構成方法を検討した。その結果として、補助的な自由度を持ったテンソル積型変分関数を最適化する基本方程式を得ることに成功した。また、角転送行列繰込み群(CTMRG)を用いると、この方程式を数値的に解けることが判明した。 以上のようにして得られた、新しい密度行列変分法(TPVA)を三次元Ising模型およびPotts模型に応用し、相転移温度や潜熱の測定などを行い、モンテカルロ法の結果と比較し得るデータを得た。 他方、CTMRGを16vertex模型に適用することによって、これまでに調べられていなかったパラメター領域での相図を確定した。
|