研究概要 |
本研究で我々は,大きさが異なる2種類のスピンが規則的に並んだ1次元規則混合量子スピン系を,数値的方法及び解析的方法を用いて研究する.本年度は, 1.2個のS=1/2スピンと1個のS=1スピンが交互に並んでいる場合(スピン-1/2-1/2-1鎖), 2.1個のS=1/2スピンと2個のS=1スピンが交互に並んでいる場合(スピン-1/2-1-1鎖), を取り扱い,系の基底状態の性質を調べた.これらの系において,各最近接スピン間に等方的な交換相互作用を仮定し,S=1/2スピン間(スピン-1/2-1/2-1鎖の場合),S=1スピン間(スピン-1/2-1-1鎖の場合)の交換相互作用定数をJ_1とし,また,S=1/2スピンとS=1スピン間の交換相互作用定数については,S=1/2スピンが左側にある場合にはJ_2,右側にある場合にはJ'_2であるとする.ここで,J_2,J_2,J'_2,は,いずれも,正の場合反強磁性的,負の場合強磁性的と定義する. Lieb-Mattisの定理を応用することにより,基底状態における全スピンの大きさS_<tot>が,J_1,J_2,J'_2の符号によって,どのように変化するかを調べた.また,特に,基底状態がS_<tot>=0の非磁性状態である場合に着目し,Wigner-Eckartの定理の適用や摂動計算を行って,|J_2|≫|J_1|,|J'_2|などの極限を調べ,考えている系を既知のボンド交代スピン鎖にマップすることにより,各極限での2次相転移線の振舞いを明かにした.例えば,スピン-1/2-1/2-1鎖の場合,J_2→∞(ただし,J_1<0,J'_2>0)の極限では,J_1=-4J'_2が相転移線となる.現在,密度行列繰り込み群法を用いて,相互作用定数平面上での基底状態相図の決定を行っている.今後,基底状態相図に対する,S=1スピンがもつ1イオン型異方性エネルギーの影響や基底状態磁化曲線などの研究も行う予定である.
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