| 研究概要 |
本年度は次の二つの研究を行った.
1.2個のS=1/2スピンと2個のS=1スピンが交互に並んだ規則混合量子スピン鎖(スピン-1/2-1/2-1-1鎖)の基底状態に対する,S=1スピンがもつ一イオン型異方性エネルギーの影響の研究.
我々のこれまでの研究で,スピン-1/2-1/2-1-1鎖の基底状態は,S=1スピン間の交換相互作用を反強磁性的に限るとき,五種類のダイマー的な状態と六種類のハルデン的な状態からなることが分かっている.一方,一様なS=1鎖の基底状態に対して,一イオン型異方性エネルギーが,ハルデン状態からLarge-D状態への,エネルギーギャップの消滅を伴う二次相転移を引き起こすことが知られている.我々は,スピン-1/2-1/2-1-1鎖の基底状態に対する,S=1スピンがもつ一イオン型異方性エネルギーの影響を,密度行列繰り込み群法を用いて計算した有限系に対するエネルギーギャップを,現象論的繰り込群法を適用して解析することによって調べた.その結果,ハルデン状態からLarge-D状態への二次相転移が,より一般的に,規則混合量子スピン鎖においても存在することが明かになった.
2.S=1/2,S=1,S=3/2,S=1スピンがこの順序で周期的に並んだ規則混合量子スピン鎖(スピン-1/2-1-3/2-1鎖)の基底状態の研究
Lieb-Mattisの定理やWigner-Eckartの定理などに基づいた解析的方法,及び,有限系の厳密対角化法や密度行列繰り込群法などの数値的方法を用いて,スピン-1/2-1-3/2-1鎖の基底状態の性質を調べ,交換相互作用定数平面上の基底状態相図を決定した.この系においても何種類かの基底状態が現れるが,それらはすべてダイマー的な状態である.また,基底状態相図に対する結果を,高野がスピン系のハミルトニアンを非線形シグマ模型にマップすることによって得た結果と比較し,非線形シグマ模型による方法の適用限界を議論した.
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