1.斥力的壁でスリット内に閉じ込められた高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。壁に平行な方向に関しては、スリットの間隔程度の大きさのブロッブの連なった2次元排除体積鎖の挙動として理解できた。壁に垂直な方向に関しては、隣り合うブロッブの垂直方向の変位の間に斥力的相互作用があるとして理解できた。 2.複数の高分子鎖の一端が共通の中心で結合された星型高分子の緩和率、緩和モードを調べた。枝の数と1本の枝あたりのセグメント数を変えたときの変化を調べ、全体の形の変化に対応した緩和モードと2本の枝の交換に対応する緩和モードを見い出した。前者は理論的に予想されていたが、後者はされていなかった。 3.斥力的壁で作られた管の2、3次元のネットワーク内に閉じ込められた高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。2次元の場合、排除体積相互作用の影響で、緩和率分布のセグメント数依存性の翼が変化していた。また最小緩和率が他の緩和率と異なる挙動を示していた。3次元では排除体積相互作用の影響は小さかった。 4.濃厚高分子系中の1本の高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。最小緩和率がセグメント数Nの何乗に反比例するかの見かけの指数がNとともに大きくなり、理論の予想値3を超えることを見い出した。扱った最大のNに対して見かけの指数は実験値に近い3.5となった。p番目に小さい緩和率のp依存性の冪は理論値2よりわずかに小さかった。緩和モードの挙動はp=1、2に対しては理論の予想にほぼ合っていた。 5.排除体積相互作用と流体力学的相互作用を取り入れて、希薄溶液中の孤立高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。流体力学的相互作用の強さを変化させたときに緩和率分布がどのように変化するかを記述する理論式を提案し、それが成立していることを確認した。
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