本研究のテーマは相互作用系でのアンダーソン転移を調べることにある。この難問に取り組むにあたり、本年度は以下の研究を行った。 1)相互作用のない系でのアンダーソン転移におけるスケーリング補正について調べた。これによりスケーリング補正がシステマティックに扱えることを実証した。これは今後、相互作用の強い系でのアンダーソン転移を扱う際にも、有益な知見をもたらすと思われる。 2)磁場が空間的にランダムに分布している系でのアンダーソン転移を調べた。このランダムな磁場は、複合フェルミオンにおける電子密度の揺らぎと解釈することが可能であり、本研究テーマと密接なつながりがある。今年度は磁場の静的な揺らぎのみを考えたが、今後はこれが動的に揺らいでいる場合を考察する予定である。 3)ランダムな系に相互作用が入った場合、フェルミ・エネルギーでの1粒子状態密度が消失する。これはクーロン・ギャップと呼ばれている。今年度は、1次元の古典的な相互作用電子系を考え、simulated anealing法で(準)安定状態をもとめ、それに対する1粒子励起エネルギーを計算した。これより状態密度の消失を確かめた。特に境界条件にこの振る舞いがよらないことを示した。
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