1995年に実現されたアルカル金属蒸気を用いたボース・アインシュタイン凝縮の研究は、さらに発展を続けている。我が国においても3グループが成功した。これらの発展を念頭に次のような研究を行った。 1.ボース原子とフェルミ原子の混合系の動的振る舞いを解析した。これらの系は、意図的にボース原子系とフェルミ原子系を混合することによって得られるばかりでなく、必然的に同位元素として含まれる粒子の効果を記述する。縮退したフェルミ粒子と凝縮したボース粒子に対して、2つの結合した非線形発展方程式が導かれる。これらは、プラズマ物理におけるザハロフ方程式と同じ形をしていることを見出した。非線形シュレディンガー方程式(グロス・ピタエフスキー方程式)の極限を議論し、フェルミ原子の存在がどのように凝縮体の性質を変えるかを明らかにした。 2.2種類のボーズ原子を混合した系の動的静的性質を解析した。変分法の試行関数を拡張し、相分離の条件を求めることができた。また、安定性に関する領域を明らかにした。励起状態は、モーメント法を一般化することにより求められる。散乱長をパラメータとして、どの励起状態がソフト化するかを解析した。この結果は、変分法によって調べた相分離の条件と一致し、励起状態が大振幅化することによって相分離が起きることが明らかになった。 3.以上の成果をまとめ、レビューをInternational Journal of Modern Physicsに発表した。
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