研究概要 |
1. 流体中の渦糸の3次元運動を計算するための高次漸近展開法の間発を行った. (1) 粘性流体中の軸対称渦輪対するNavier-Stokes方程式の初期値問題を高精度で解くため,接合漸近展開法を渦核-リング半径比について高次まで拡張した.並進速度に対する核の歪みによる減速効果の一般公式を導いた.さらに,渦度分布やリング半径が拡がりの数値計算を行い,実験値と10%の誤差の範囲内で一致をみた. (2) Euler方程式に基づく渦糸の3次元的運動速度を,接合漸近展開法を用いて,渦核-曲率半径比について3次まで導出した.得られた非線形発展方程式が,局所誘導階層とよばれる完全可積分系一致することを発見した. 2. 渦輪の3次元安定性,複数の渦糸の相互作用,さらに非定常運動する渦が生成する音波の数値解析を行った. (1) Hillの球形渦の3次元線形安定性の数値解析を行った.球面調和関数展開を用いてEuler方程式を動経のみに依存する式に帰着させ,差分法を用いて数値的に解いた.後部淀み点近傍からスパイク状の構造が発達することを示し,その増幅率を計算した. (2) 相互作用する量子渦糸の切りつなぎ現象を調べるため,Gross-Pitaevskii方程式の数値シミュレーションを行なった.切りつなぎの詳細な様子と,それに伴って発生する音波を考えられる波形を捉えた. (3) 2次元渦対の衝突により発生する渦音をNavier-Stokes方程式の数値シミュレーションによって直接計算し,音波と渦運動との関係を明らかにした.また,渦と音波および衝撃波の干渉の数値計算を行なった. 3. MHD乱流の統計的性質を,直接数値シミュレーションデータのウェーブレット解析とカスケード・モデル方程式の解析の両面から調べ,特性時間のスケーリングをエネルギー輸送の関係について議論した.
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