研究概要 |
空中に浮遊した液滴微粒子はその表面張力によって真球に近い形状をとるため、きわめてQ値の高い光共振器となりうる。 本研究では、ローダミン色素の希薄グリセリン溶液からミクロンサイズの微小液滴を作り、それを帯電させてからイオントラップ中に捕捉した。この液滴に緑色レーザーを照射したときの発光特性を、顕微鏡像の観測と分光測定とを同時に行うことによって調べた。 本年度に行った研究は以下のとおりである。 1.ポンプレーザー光の強度が弱い場合,色素分子の自然放射の蛍光が放射の主要部を占める。したがって顕微鏡像では液滴全体が発光し、発光スペクトルでは色素溶液固有の幅の広いスペクトルを呈する。 2.ポンプレーザー光の強度が強くなると、顕微鏡像も発光スペクトルも劇的な変化を見せた。これは液滴内で、whispering galleryモードと呼ばれるモード中の特定のものがレーザー作用を起こすためである。Q値が大きくなる表面モードが強く励起されるため液滴の表面付近だけが強く発光し、スペクトルには数本の強く鋭いピーク構造が見られた。 3.ポンプ光の偏光状態を変えたときの発光の偏光状態も観測し、その結果とスペクトル線の波長分布及び粒径から、Mie散乱の公式を使ってモードの同定を行った。
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