Sato and Kanamori(1999)が提案したモデル(以下S-Kモデルと呼ぶ)を用い、地震の初期破壊過程のソースパラメータ(L_0:初期クラックの半径、δ:トリガー係数、Δσ:応力降下量)を決定する方法を開発し、長野県西部地域で観測された高感度・高サンプリングの微小地震の波形データーに応用した。 まず、今回開発したインバーションの手法の有効性を確認するため、人工的に作成した理論波形を観測データーとして、どの程度真のパラメータを再現できるか調べた。その結果、地震波の減衰を表すQ_p値を未知数とすると、L_0、δ、Q_pの間にトレードオフの関係が生じ、それらのパラメータを独立に決定することが難しいことがわかった。Q_pを既知とすれば、δ=10^<-2>のSpontaneous Modelに対してはインバーションの結果、δは10^<-5>〜10^<-1>の範囲に推定され、L_0は10%以下の小さな誤差で決定される。一方、δ=10のTrigger Modelに対してはインバーションの結果、δは>1となり、L_0の値は決定できないことが示された。以上の結果から、今回開発したインバーションの手法によりSpontaneous ModelとTrigger Modelを判別することは可能であり、Spontaneous Modeの場合はL_0が精度良く決定されることが明らかになった この手法を長野県西部地域で観測された3つの微小地震(M=1.6〜2.6)に適用した結果、1個の地震はSpontaneous Model、他の2個の地震はTrigger Modelとして判別された。Spontaneous Modelに該当する地震の初期クラック半径L_0は約10m、最終的なクラックの半径は約50mと推定された。今後はさらに多くの地震について初期破壊過程のソースパラメータを求め、マグニチュードとの関係、地域変化等について調査する計画である。
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