研究概要 |
本研究は,多点広帯域地震波形データ及び空振波形データの解析とマグマ・熱水運動と地震波動伝播の数値シミュレーションに基づいた火山長周期地震の発生モデルの構築を行った.1998年より火山活動が活発化している岩手山及び2000年4月より浅部地震活動が活発化している磐梯山において,4〜6点の広帯域地震観測及び空震観測を実施し,火山長周期地震の高精度のデータを取得した.波動特性を調べた後,長周期地震の震源位置,発震機構解をモーメントテンソルインバージョン法により推定した.また,不整形なダイクや火道中のマグマ性流体の運動により励起される地震波動を計算し,観測された長周期イベントの特徴を説明できる長周期地震発生モデルを構築した.本研究で得られた主な成果は以下の通りである. 1.岩手山で発現した長周期地震は,Vp/Vs比が大きくマグマ性流体の存在が示唆される西岩手山の深さ2kmで発生し,対角成分が卓越するモーメントテンソル解をもつこと明らかとなった.これらより,長周期地震波は,マグマ性流体の膨張収縮運動により励起されていると推察された. 2.磐梯山で観測史上初めて記録された火山性微動には,周期10秒程度の長周期成分が含まれていた.この長周期成分は,磐梯山山頂より約3km北東の深さ5kmでの膨張収縮運動により励起されたと考えると観測波形データをうまく説明できることがわかった. 3.本研究で解析した磐梯山や岩手山の結果や他火山で得られている研究成果をまとめると,火山長周期地震の発生機構解は,周期10秒前後の周期で膨張収縮する運動で表すことができることが明らかとなった.この発生機構解と卓越周期は,狭い通路で繋がれた2つのマグマ性流体溜まりの振動現象で説明できることを,マグマ性流体を圧縮性流体の基礎式で記述し,それを数値差分法で解くことにより明らかとした.
|