研究概要 |
(1)理論的研究:核の内部の電磁場について,最新のMHD(電磁流体力学)ダイナモモデルの解を収集し,その中からコアーマントル境界における電磁場変動を取り出し,それらのモデルで予測される地表における電場の強度と空間分布を求めることを目的とする.MHDダイナモモデルとしては,Glatzmeyer and Roberts(1996)とSakuraba(1999)の2つを調べることにした.今年度は,コアーマントル境界における数値計算結果を境界条件として不均質地球における電磁誘導のモデリングを行なうためのプログラムの開発を行なった.マクスウエル方程式の積分方程式による解法の一種である変形ノイマン級数を用いた方法を用いた.その結果,陸地と海との間の電気伝導度の違いの影響や,下部マントル最下部の地震波構造のD"層に対応する部分の不均質構造の影響などを正確に表現できる機能をもったプログラムを開発することができた. (2)実験的研究:微弱な電圧変動を測定するためには,安定な電極を使用することと,その特性を把握しておくことが必要である.過去の研究成果をもとに,長期的な観測に適した銀-塩化銀電極を作成した.しかし,通常行なわれている方法で作成した電極は,海水が非常に浸み込みやすく,長期間使用すると電極の機械的および化学的劣化が問題となることが判明した.この問題を解決するために試作を繰り返した結果,銀電極の周囲に塩化銀を固着させる際に,容器内部を減圧しながら行なうことにより空隙率を小さくかつ一様に仕上げることができることがわかった.こうして開発した新しい方法で,長さ5cm,10cm,20cmの3種類の電極を製作した.これらの電極を用いて,長期的安定性や電極のサイズによる違いを確かめるため,0〜4℃の範囲で温度を変動させつつ起電力の変動を測定する実験を開始した。
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