(本研究は、地球ダイナモによって発生する磁場にともなう電場(=地球電場)に着目して、新しい視点から流体核のダイナミクスを解明する道を開拓することを目的として行った。研究実績の概要を以下の2点について述べる。 (1)予想される電場変動を予測する理論的研究 以前に行った研究では、核-マントル境界におけるトロイダル磁場の強さと表面で測定される電場の強さの関係を明らかにした。しかし、その計算を行うにあたっては、トロイダル磁場がどのような性質であるのかについては全く考慮していなかった。実際には、核内のダイナモ過程の結果としてのみ、トロイダル磁場は存在しうる。そこで本研究では、核内部ダイナモ作用(キネマティック)を考慮に入れたトロイダル磁場と、それに対応する地表における電場との関係を調べた。その結果、安定なダイナモに関連して、十分に観測可能な強度の地球電場が期待できることが明らかになった。 (2)観測装置の開発と試験的観測の実施、データの解析 (1)で期待される地球電場を、地球上の任意の海域の海底で測定を試みるための適当な装置の基本設計を行った。理論研究で予測される強度の電場変動を検出するために必要なケーブル長はおよそ100kmと考えられる。具体的な敷設方法について考察した結果、現在の技術によって生産可能なケーブルを用いて、特殊なケーブル敷設船によらずに100kmのケーブルを敷設する方式を考案した。考案した敷設方式では、用いる電極の性能が極めて重大な要素になる。本研究では、直径5mm、長さ20cmの銀線の表面に電気分解によって塩化銀をコーティングした電極を開発し、他の複数の材質の電極と比較測定を行った。そして、目的とする地球電場を検出するのに十分な性能があることを示した。
|