研究概要 |
本研究では,これまで小地震の断層面積推定の制約となっている「破壊伝播速度の仮定」を用いないで断層面積を求める独自の方法を開発する.この手法を用いて小地震の断層面積を多くの地震について求めて,地震の相似則がどのような規模の範囲で成り立っているかを解明する.具体的には,断層運動が停止した時に励起されるストッピングフェーズを観測波形から捉えることにより,破壊速度を仮定せずに小地震の正確な断層面積を推定する.さらに,楕円形断層における定式化を行い,より現実的な断層運動についても適用できるように解析手法の拡張を行う. 初年度は,円形断層モデルによる推定法を1997年3月伊東沖群発地震活動の小地震に適用して,小地震の断層面積及び断層面の幾何学的パラメータの決定に成功した.この成果は,欧文国際誌に掲載された.さらに,この手法を1997年山口県北部地震の余震に適用してた.山口県北部地震の余震では,本震発生直後に震源域直上に3つの臨時観測点を設置し多くの余震について良好な記録が得られているので,精度よく断層面積と断層の走向が推定できた. また,ストッピングフェーズを用いた断層面積の推定法を楕円形断層に拡張する事に取り組み,具体的な定式化に成功した.この拡張された手法を長野県西部地震の震源域に展開された稠密地震観測網のデータに適用して,断層面の形状や破壊伝播方向の解明に成功した.この成果も欧文国際誌に投稿し掲載される予定である.
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