研究概要 |
昨年度から本年度にかけての研究で,これまでの小地震の断層面積推定の制約となっている「破壊伝播速度の仮定」を用いないで断層面積を求める独自の方法を開発し,これを纏めた論文を国際学術誌に投稿して受理された.具体的には,断層運動が停止した時に励起されるストッピングフェーズを観測波形から捉えることにより破壊速度を仮定せずに小地震の正確な断層面積を推定するのであるが,さらに,楕円形断層における定式化を行い,より現実的な断層運動についても適用できるように解析手法の拡張も行こなった.同論文の印刷は2001年になる予定である.ついで,この手法を用いて小地震の断層面積を多くの地震について求めて,地震の相似則がどのような規模の範囲で成り立っているかを解明する研究に取り組んでいる. この拡張された手法を長野県西部地震の震源域に展開された稠密地震観測網のデータに適用して,断層面の形状や破壊伝播方向の解明に成功した.現在,約30個の小地震について,その断層の大きさや破壊伝播速度を推定しており,さらに,約20個の地震を解析中である.また,これらの地震を含むマクニチュード0.8〜2.8の小地震について,その地震波エネルギーを求める解析も行い,地震波エネルギーの励起と地震モーメント,断層の大きさや破壊伝播速度との比較を行い,小地震に見られる相似則の検討にも着手している.その結果,地震モーメントが小さくなるほど破壊伝播速度が遅くなる傾向が見られる結果が得られているが,今後,解析結果を増やして検討を進める必要がある.
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