研究概要 |
本研究において,地震計ネットワークの地震波形データを用いた変換波の解析により,マリアナ弧から伊豆小笠原弧東方を中心とする北西太平洋の下部マントル中央部に10km〜100km程度のスケールの比較的小規模な不均質が複数存在することを明らかにした.具体的研究内容は次ぎの三項目である: 1 北西太平洋下部マントルS波P波変換物体の決定論的検出を行なった. 2 北太平洋全域の下部マントルP波P波散乱体の組織的決定論的検出を行なった. 3 全地球規模の下部マントルにおけるP波散乱強度の統計的推定を行なった. 1の結果:北西太平洋マリアナ東部深さ1000km〜2000kmに急傾斜する互層構造薄い層でS波P波変換が起こる.複数の面状の物体の数は3〜4枚あるいはそれ以上である.面の間隔は60km〜300kmであり,各面での地震波変換効率は10%程度以下.各面の水平方向の広がりは〜500km×300km程度と考えられ,傾斜角は〜35゜程度である.面の一つは,層の厚さ〜8kmで,S波速度低下〜4%以上の薄い層と考えると観測のいくつかの側面がが良く説明される.北西太平洋の下部マントルには同種の地震波散乱体が複数存在する.例えば,カムチャッカ半島南や伊豆諸島周辺がその例である. 2の結果:北部太平洋にはP波P波散乱体と考えられる物が少なくとも数十のオーダーで存在する.P波速度の変化は1%以下. 3の結果:北部太平洋の下部マントルのP波速度の統計的ゆらぎは2〜2.5%以下である.不均質の特徴的長さは10〜20kmと考えると都合が良いようである. 上記のように,下部マントル小規模不均質を検知する手法を発展改良させて,全地球規模での同種の小規模不均質の分布状況を明らかにした.
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