研究概要 |
Lunar-Aミッションが取得する限られた月震データから月深部構造を効率良く推定するためのアセスメントを行なうのが本研究の目的である. 平成11年度は (1)地球マントルからの衝突分離形成モデルに基づく月震速度構造の作成, (2)補助的なデータとなる米国アポロミッションで得られた月震波形のデータベース作成, (3)複雑な月震の散乱を説明する現実的な月震波形計算法の開発および波形計算を行なった. (1)月の岩石学的情報を元に奥地・高橋らが提唱している月形成のシナリオに従う月の岩石学的モデルを妥当なものと考え採用した.その鉱物ノルム計算を月マントルの各層に対して行ない,月震速度構造モデルを作成した.そのプロフィールは最近行なわれたアポロデータの再検討による月震速度構造の研究結果と調和的なものである. (2)米国アポロミッションで取得された月震波形のデータベースを作成した.またその波形の周波数解析を行なった.このデータベースは東工大地惑のウェッブサーバを通して他の研究者が閲覧可能となっている.これらの結果はLunar-A計画において深発月震パラメータの決定作業などで大いに利用された. (3)竹内らが開発した高精度・高速波形計算法であるDSM法を月震波形計算に適用した.特に月震波形に見られる長時間に渡る月震散乱を月表層に単純な互層モデルを置くことで再現できることを示した.月震散乱はアポロデータで見られる顕著な現象で深部構造を解明するには実在する散乱を考慮して解析を行なう必要がある.まだ予備的な計算結果ではあるが,Lunar-Aで投入する月の表裏の2機の月震計のデータが取れれば月の内部核の大きさを制約できることを示した.アポロ12,14号付近の表機でアポロデータとの比較から表側で起こる深発月震を特定し,ほぼ裏側に置かれた裏機で取得されるpP(月表層で一度反射して届くP波)とPdiff(月の核表層を伝わる回折波)の到達時間差から月の核のサイズを決定する.
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