常時地球自由振動については、これまでに統計的性質、時間変動、大気自由振動とのカップリングといった詳細が明らかにされてきた。その結果、常時地球自由振動は大気の圧力変動により全球上でランダムに励起されている可能性が高いことが分かってきた。 本研究では、常時地球自由振動の大気現象との関連性を調べるため、STS地震計記録の解析から励起の日変動の検出を試みた。その結果、励起が9-21時(UT)で大きく、21-9時(UT)で小さいような日変動が存在することが示された。これはグローバルな雷の活動度と見かけ上調和的であった。これらの間の因果関係はまだ不明だが、示された日変動は常時地球自由振動の大気励起を示す決定的な証拠と考えられる。 超伝導重力計の4観測点キャンベラ、江刺、メツァホビ、昭和基地の記録を解析した結果、江刺以外の観測点で常時地球自由振動の検出を確認した。しかし、昭和基地からの結果に見られる明瞭な励起の季節変動と3--4〜mHzの範囲での励起の高まりは、その他の超伝導重力計観測点からの結果には見られなかった。従って、昭和基地の結果に見られた特徴は観測環境やセンサーそのものに起因するローカルな現象である可能性が高いことが分かった。 これまでの大気励起の理論には、エネルギーバランスの次元解析的アプローチや陽震学で用いられている確率論的アプローチがある。本研究では、より厳密な地球自由振動理論を用いて大気の圧力変動が地表に与える力と地動の加速度の関係を導いた。最終的に得られる結果は個々のモードの振幅ではなくパワースペクトル全体なので、結果を観測と直接比較することが可能になった。解析の結果、これまでの大気科学の研究から見て妥当と考えられるパラメータを用いると、本研究の理論スペクトルで観測スペクトルが大まかな傾向はもとより詳細な部分まで説明可能であることが分かった。このことも、常時地球自由振動の大気励起を示す決定的な証拠と考えられる。
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