研究概要 |
研究代表者は,国内の研究者と協力し,超伝導重力計による国際観測網(GGP-Japanネットワーク)の構築を行ってきた.この観測網により得られた重力の連続観測のデータを使い極運動による重力変化通して長周期における地球の力学応答を研究できるようになった.研究代表者等が行った南極・昭和基地データの解析結果は,極運動データに対し重力データが大きな(約20日の)位相遅れを示していた.本研究の目的は,その原因を究明することにあった. 極運動には自由振動であるチャンドラー成分と,強制振動である年周成分からなる.本研究では,先ず主として地球表面での質量変動に起因すると考えられる年周成分について調べた.特に,従来殆ど手がつけられていなかった,全球海水位変動における年周質量変動による重力変化について,人工衛星(TOPEX/Poseidon)高度計,また比較のため海洋大循環モデルのデータを使い,この評価を行った.計算精度の向上を図る目的で,ヨーロッパ中規模気候予報センターのデータを購入した.観測点を昭和基地の他に,日本の江刺,オーストラリアのキャンベラについても解析し,比較した.以下の成果が得られた. (1)いずれの観測点についても,観測された年周重力変化は極運動,固体地球潮汐,そして海水位変動でよく説明できることが分かった. (2)位相遅れの大半は海水位変動の影響として説明できること.見積の精度は温度ステリック成分の見積精度に依存していることが示された. (3)重力が質量変化に敏感な性質を使い,重力計データを高度計や海底圧力計のデータと組み合わせることで,今以上の精度で海洋における質量移動を調べられる可能性が分かった.これは重力の新しい応用が開拓できる可能性があることが示すものである. 本研究の結果は,観測期間が延びることで解析の精度が上がり,重力データからも極運動に典型的に見られる地球流体と固体部分のカップリングダイナミックスについて本格的に研究ができることを示している.
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