大気大循環モデルによる2月固定ランの結果を成層圏と対流圏の関係という観点から解析を行った。成層圏には極夜ジェット振動(PJO)という数ヶ月周期で極渦の強さが変動するパターンが卓越しており、PJOと対流圏のAOとの関係を調べた。簡単化した北極振動(AO)インデックスとして北緯58度と30度の帯状平均東西風の差を規格化し各レベルで毎日のaoi^*と定義した。毎日のaoi^*の分布は850hPaでは、正規分布よりはフラットであるが、1つのピークを持つ分布となる。ところが31日移動平均の分布は、はっきりした2山型の分布となる。これはAOが正の場合と負の場合の二つの天候レジームがあることを示唆する。一方、成層圏では日平均も31日移動平均もaoi^*が負の方に裾が延びた分布となる。 31日移動平均場において50hPaのaoi^*と850hPaの帯状平均東西風とのラグ相関を調べると50hPaのaoi^*と同時では正のaoi^*に対応する東西風パターンが現れるが、強い相関は15日後くらいに現れ、正のまま100日後まで持続する。また40日前くらいに負のaoi^*に対応する相関が現れる。つまり成層圏で正(負)のaoi^*であると対流圏はaoi^*が正(負)方向にシフトし持続する傾向がある。逆に、850hPaのaoi^*を基準に50hPaや10hPaの平均東西風とのラグ相関をとると、30〜40日後を中心に負のaoi^*となる傾向がある。つまり成層圏のAO(PJO)が対流圏のAOを同符合にシフトさせ、対流圏のAOが30〜40日後に成層圏のAO(PJO)を逆符号にシフトさせる。この結果、弱いながらも4ヶ月程度の周期性が現れるものと考えられる。
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