北極振動(Arctic Oscillation)は北半球中高緯度大気で主に冬季に最も卓越する海面気圧の北極域と中緯度域とのシーソー的変動である。鉛直にはほぼ等価順圧的構造を示し、下部成層圏まで達している。このモードは北大西洋振動(North Atlantic Oscillation : NAO)と似ているが、よりグローバルで、より環状であり、Thompson and Wallace(1998)により北極振動と命名された。 2月に季節を固定したAGCM実験により北極振動は強制モードではなく大気内部のモードであることが、明白に示された。モデル内で北極振動が正の位相へ移行するときと負の位相へ移行するときのコンポジット解析により、平均東西風と準定常プラネタリー波及び総観規模波動の相互作用により北極振動が卓越することが明らかになった。 冬季の北極振動は成層圏循環(極夜ジェット振動)と関係があり、成層圏で極夜ジェット振動により極渦が強(弱)くなると(北極振動でいえば正(負)の位相)、対流圏でも強(弱)い方向へ位相が変化する傾向があることが2月固定実験で明らかになった。現実にも、成層圏突然昇温が起こると(負の位相に相当)、その後、対流圏AOも負になり、中緯度で異常寒波に見まわれやすいことが他の研究で示されている。 経年変動及び季節内変動の両方の時間スケールで北極振動はユーラシアや北日本・オホーツク海周辺の冬季の気候と良い相関がある。オホーツク海の海氷面積を解析した結果、遠く離れた北大西洋の気圧場とよい相関があること、即ち、北極振動と関係があることがわかった。
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