研究概要 |
本研究では、静止衛星の可視・赤外放射計によって観測された太陽光の反射(サングリッター)から、幾何光学を用いて海面勾配の確率密度を見積り、これをマイクロ波散乱計で同時刻に観測された海上風の風速・風向と組み合わせることによって、波面勾配の確率密度の風速・風向依存性を調べることを目的とした.静止衛星(GMS, 愛称ひまわり)の可視・赤外放射計データから、陸域及び雲域を除いた海面の中で、太陽光の反射(サングリッター)の観測される領域を抽出した. 衛星・海面・太陽の幾何的位置関係から太陽光の鏡面反射を起こす波面の傾斜角(鉛直面からの傾き)・方位角を計算した.また、可視域チャンネルの輝度から、鏡面散乱に寄与した面の面積比率(存在確率)を求めた. この計算は、空間分解能25kmで行った. このようにして求めた鏡面散乱面の存在確率と、ERS-2およびNSCATマイクロ波散乱計の海上風ベクトルデータ(空間分解能25km)との時間・空間同期データを作成した. 作成した同期データを風速・風向に相対的な方位角(以下相対方位角と呼ぶ)・傾斜角で分類して、同じ風速・傾斜角・相対方位角の条件で得られたデータの平均・標準偏差を計算した. 以上の解析によって、それぞれの風速において、鏡面散乱面の確率密度分布が、傾斜角・相対方位角の関数として得られた. また、データ数および標準偏差から、誤差および統計的有意性の評価が可能である. 今年度は、昨年度までに作成した同期データセットの再解析を行い、波面勾配密度の風向・風速依存性について調べた. その結果、波面勾配は、従来用いられている経験式に比べ、等方的で滑らかな分布をしていることが明らかとなった. 以上の成果を論文として公表する予定(印刷中)である.
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