1999年5月22〜29日(1回目調査)および同年10月4〜12日(2回目調査)に、東シナ海中央部の大陸棚縁辺部において、CTDによる水温・塩分および濁度の鉛直分布測定を、また同時に係留系による流速と水温の時間変化の測定を行った.また2回目調査では曳航しながら昇降させて水温・塩分を測定する機器(Flying Fish)を用い、詳細な分布の測定を試みた. 1回目調査では、観測期間の前半には陸棚上の表層に分布していた低塩分水が、後半には陵棚端の方に張り出してくる傾向がみられた。それに伴って低塩分水の黒潮への潜り込みもみられたが、表層の低塩分水とのつながりはやや不明瞭であった。また、2回目の調査では、観測期間の前半には陸棚端の表層付近に低塩分水の小さなパッチがみられ、後半には陸棚よりの低塩分水とつながって、広い範囲を占めるようになった。この結果からは、低塩分水が黒潮縁辺部に形成された渦に沿って取り込まれるような形状が推定されたが、黒潮中層への大きな潜り込みはみられなかった。 係留系による観測では、短いスケールの内部波が観測されたが、特に1回目の調査では観測期間の後半に顕著な内部波が起こっており、成層構造の変化も見られた。また、2回目の調査では天侯の悪化のため途中で係留系を回収したため、十分なデータが得られなかった。2回目の調査で用いた曳航用のプロファイラーでは、陸棚端付近の詳細な海洋構造が得られたが、低塩分水の潜り込みについてはあまり明瞭な現象は起こっていなかった。 黒潮と沿岸水との相互作用について、大西洋の湾流の場合と比較検討するため、湾流における同様の研究の経験が深いアメリカの研究者を訪問し、今回得られたデータと湾流の研究との比較を行い、今後の研究の進め方について議論を行った。
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