海洋に生息する植物プランクトンが海洋生態系や地球温暖化において非常に重要な役割を果たしていることは、よく知られている。植物プランクトンの生態を明らかにするためには、3次元的な空間分布と時間変動データを取得することが不可欠である。本研究では、駿河湾における植物プランクトンのブルーミングメカニズムを解明するための船舶曳航体観測システムを構築し、実際に連続観測を行い駿河湾の植物プランクトンがどのように分布しているのかを調べた。 本研究室では、平成8年から東海大学所有の望星丸(1777トン)を用いて曳航体観測を行ってきた。しかし、外洋での観測を主としていたため、本研究のために駿河湾において、小型船舶による観測が行えるようにシステムを再構築した。観測システム構築後、実際に観測を行い連続かつ鉛直的な水温、塩分、蛍光光度データを取得した。また、3次元的な植物プランクトンの分布を把握するため、平成11年〜平成13年のOrbview2/SeaWiFSより得られた水色データ、及びNOAA/AVHRRより得られた水温データを解析し、海表面における植物プランクトンの空間的・時間的変動を観察した。更に船舶観測で採水してきた海水をHPLCにて解析し、クロロフィル-a量の定量化を行った。まず最初に、本研究期間の駿河湾の春季ブルーミングについて注目したところ、平成12年の春季ブルーミングが平成11年、平成13年に比べ一ケ月程度遅れて発生していた。この原因を検討したところ、平成12年2月は、他の2年に比べ風による影響で鉛直循環が盛んになり、混合層が発達したため春季ブルーミングの発生環境が整っていなかったことがわかった。すなわち、クロロフィルブルーミングには鉛直構造が重要であることが判明した。次に、本研究で得られた曳航体データから、駿河湾の基礎生産量を推定するためクロロフィル濃度の鉛直分布形態を推定することを試みた。その結果、海表面クロロフィル濃度と水深30mの塩分を組み合わせることにより、クロロフィル濃度の鉛直分布形態を推定できることがわかった。すなわち、水温と塩分とを比べると塩分の鉛直構造の方がクロロフィルの鉛直分布に強く関連していることがわかった。
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