成層圏においてオゾンを極に運ぶ大気や、極渦周辺の大気等の3次元ラグランジュ運動を回転円筒水槽実験で再現し調べるのが本研究課題の目的であった。中緯度対流圏のロスビー波を再現する従来の回転円筒水槽実験では水深全体に半径方向に温度差を与えているが、今回は底から水深全体の20%にあたる高さにのみ半径方向に温度差を与え、さらに観測水の水面を暖めることで下層に対流圏にあたるロスビー波の流れ、上層に成層圏にあたるハドレー流の流れを作ることに成功した。第一に、対流圏から成層圏へのロスビー波の伝播に当たる実験をするため、ベータ効果に相当する半径方向の傾斜を底に入れて波数5、4、3におけるロスビー波の上層への伝播について調べた。その結果、理論的に予想されているように、ベータ効果が働いて伝播が起こること、波数の小さい波が高く伝播することを確かめた。さらに、夏の成層圏はロスビー波の伝播がなく極めて穏やかであることを示す実験をするため、水槽の中心の冷水層の上部に温水を入れて上層に北極の夏の成層圏にあたる時計方向のハドレー流を作りロスビー波の伝播の実験をした。その結果、この条件では全くロスビー波の上層への伝播がないことが確かめられた。これらの結果を発表するため、PIV(粒子画像流速測定法)を用いてデータ解祈している。回転円筒水槽実験でPIV技術を用いる実験は、すでにテキサス大学Center for Nonlinear DynamicsのSwinney教授のグループで行われていて、9月13日から約1ヵ月訪問し実際に実験を体験することにより回転円筒水槽実験でのPIV技術を得てきた。又、本研究課題について9月時点までの結果についてまとめて1時間講演し、実験技術全体について議論してきた。本研究課題のこれまでの結果を現在論文にまとめ発表を予定している。
|