本研究は、宇宙空間プラズマ中の非熱的電磁波放射の機構の中で、特にコヒーレントな静電的プラズマ波動が電磁波に変換するモード変換プロセスを研究の対象とし、いかなるプラズマの不均一が有効に静電的プラズマ波動から電磁波へのエネルギー変換に寄与するのかを解明することを目的としている。特に、科学衛星EXOS-D(あけぼの)搭載のプラズマ波動観測装置(PWS)および東北大学のデカメータ電波観測施設によって観測された、プラズマ密度、静電的プラズマ波動の強度、放射された電磁波の強度、偏波特性を総合的に解析しモード変換が起こるプラズマの諸相を具体的に解明し、その結果をもとに、提唱されている理論を検証し、宇宙空間においてモード変換過程が作用する実状を明らかにしようとしている。 昨年度までの成果は、2つの論文に共著の形でまとめられ出版されている。 今年度は、特に、モード変換過程を地球の極域から放射される地球ヘクトメートル電波の問題に着目し、あけぼの衛星によって観測された放射電磁波の強度と発生域における静電的プラズマ波動の強度関係を定量的に解析した。本年度研究により、地球ヘクトメートル電波の強度の強い成分の周波数が1.7MHzとその2倍の高調波に存在することが判明し、その原因について究明した。その結果、1.7MHzという周波数は、電磁波の起源となるUHR modeの波動が励起される際、波動周波数が2倍の電子サイクロトロン周波数と一致することが本質であること、またその2倍の3.4MHzの放射は、このUHR modeの波動の非線形のモード変換によって発生していることが明らかとなり、学会、研究会等で報告した。現在この今年度の成果について出版の準備を進めている。
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