雷放電により放射された電磁波(空電)を観測するための、雷空観測システムの設計・製作を行った。このシステムでは、空電の磁界成分を直交2軸のループアンテナにより検出し、ブリアンプおよびアンチエリアシングフィルタ回路に通して増幅し、サウンドカードを利用して2chの磁界波形成分をPCに取り込んで、FFT解析を行ない空電のダイナミックスペクトルを表示する。実際に北陸で観測された空電の最大値40V/m(磁界強度1.33x10^3γ)まで観測可能であるようなシステムの設計を行なった。ループアンテナは直径80cm、巻数20回とし、ステップアップトランスを通してプリアンプに接続されている。この部分は2kHz以下の周波数成分を抑えるハイパスフィルタとしても働き、ハムノイズ混入を防いでいる。プリアンプにより増幅された磁界波形はアンチエリアシングフィルタ(ローパスフィルタ)により10kHz以上の周波数成分を抑え、更に1段階増幅した後サウンドカードにサンプリング周波数22kHz、16ビットで取り込まれる。雷空電波形のピーク前後の波形を完全な形で取得するために、PCは常時データの記録を続けており、波形ピーク(ある閾値以上のインパルス波形)を検出すると自動的にその前後2秒ずつの連続波形を保存するようになっている。このシステムを利用して、金沢大学工学部にて北陸の冬雷による空電波形を取り込む実験を行ない、近距離雷による空電のダイナミックスペクトルを観測した。 一方、以上の解析と並行してFull Wave法による近距離空電スペクトルの理論計算を行なっており、電離層-大地の多重反射による2kHzとその高調波などの特徴的なスペクトル形状の、雷からの距離依存症を解析している。上の実験による観測波形にもこのようなスペクトル形状がはっきりと現れており、Full Wave計算法との詳細な比較解析を行うことにより、近距離雷空電伝搬特性を利用した雷放電位置の検出法を検討しているところである。
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