本研究ではLEF-TOF型高質量分解能プラズマエネルギー質量分析器の設計、試作、特性取得実験を3年計画で行うが本年度はその1年目であり、分析器の計算機による設計、位置検出、時間差計測用MCPアノードの試作および特性取得試験、分析器の一部試作を行った。 本年度はまず、計算機を用いて分析器の電極形状の最適化を行った。具体的には分析器内の電場計算を行い、入射イオン、二次電子の飛行経路を追跡する事によって最も望ましい特性となるように電極の形状、配置を決定した。この計算を行う過程で、位置検出、時間差計測用MCPアノード付のアノードパターンも最適化できるため、このアノードの試作、アノード、MCP単体の特性取得試験も行った。その結果アノードはほぼ設計通りの特性を示したが、同時に改良の必要な点も明かとなった。具体的には荷電粒子が観測器内の飛行を開始する時間を検出するためのメッシュアノードと、飛行を終了する時間を検出するためのアノード間に電気的なカップリングが存在すること、位置検出を行う抵抗体アノードとメッシュアノードの間の電位配置によって、位置検出精度が悪化することなどが明かとなった。これらの点については今後改良を行う予定である。本年度は更に、質量分析部の試作を一部行った。具体的には、カーボンフォイルを装着するフォイルホルダーの試作を行い、カーボンフォイルがどの程度の強度をもつかを調べるための実験を行った。これは、密封できる容器の表面にカーボンフォイルを装着し、密封容器内を減圧して差圧計測素子によってカーボンフォイルの両測の圧力差を計測することでカーボンフォイルがどの程度の差圧で破損するかを計測するものである。この結果1.2μg/cm^2のカーボンフォイルを333lpiのメッシュにのせた場合、少なくとも5.0X10^<-2>atmまでの差圧には耐えうることが明かとなった。
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