本研究ではLEF-TOF型高質量分解能プラズマエネルギー質量分析器の設計、試作、特性取得実験を3年計画で行うが本年度はその2年目であり、1年目の昨年度の計算機による計算結果に基いてLEF-TOF質量分析部の試作を行い、試作したLEF-TOF質量分析部の特性取得試験も行った。具体的には昨年度の計算機による計算結果に基いてサイズと形状を決定した、曲率を持ったメッシュを含む電極、非常に薄いカーボンフォイル、カーボンフォイルを貼るための目の細かいメッシュとそのメッシュを装着する為のホルダー、円筒形セラミック内壁にリング状電極、外壁に抵抗体を形成した質量分析器の心臓部となる部品、以上の構成部品をケースの中に配置して試作品を製作した。その後、試作した装置を真空槽に入れて測定対象となるヘリウム、窒素、ナトリウム等のイオンを入射し、特性計測試験を行った。この結果、基本的には入射イオンの質量を高い質量分解能(m/Δm〜15)で検出できることが確認できたと同時にいくつかの改良すべき点も明かとなった。この質量分析器の電極には、+-15kVという高い電圧を印加するが、電圧を印加しただけでノイズとなる信号が発生した。これは電圧の印加によって電極の一部から電子が放出されるためと考えられる。これに対しては電極の化学研摩を行うことによってノイズの軽減に成功した。また、ヘリウム、窒素等の軽いイオンについてはカーボンフォイルを比較的通過し易く、角度散乱も少ないため検出効率が高いが、ナトリウムなどの重いイオンについては、カーボンフォイルを通過する際のエネルギー減少、角度散乱の効果が大きく、検出効率が下がってしまうことも明かになった。この点については、使用するカーボンフォイルの厚さを変化させてその特性を調べ、使用可能な最も薄いカーボンフォイル(1.2μg/cm^2程度)を使用する必要のあることが明かとなった。
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