本年度の研究目標を以下のように設定した。 「付加体の形成プロセスを把握するために、付加体における泥質岩を対象として、その変成相と変形相を検討する。変成相は泥質岩が弱変成を受けていることからイライト結晶度を用いる。また変形相はS-C structureやRiedel shear・duplexなどの小〜微細構造を中心に運動センスを求める。これらを総合して、付加体の発達史を構築する。」 本年度は、昨年度実施したタイ国バリスカン造山帯に相当する地帯の泥質岩の小〜微細構造の解析を行った。その結果、S-C structureやRiedel shear・duplexなどの小〜微細構造を、また、泥注入の現象を確認した。今後さらに泥質岩のイライト結晶度の測定を進める予定であるが、予察的にタイ国サア・ケオ縫合帯の泥質岩のイライト結晶度の測定を試みた。タイ国では風化が著しくイライト結晶度の測定が可能か否か心配されたが、充分測定可能であることが確認された。結晶度は秩父帯泥質岩のそれに匹敵するものである。また国内秩父帯泥質岩に関して、本年度は昨年度と同様に関東山地上野村周辺の秩父帯の泥質岩の採集と微細構造の観察を行った。その際、数kmオーダーのduplexを確認した。これは地質図オーダーのduplexであり、今後さらなる検討が必要であるが、同様な規模のduplexが関東山地奥多摩地域でも発達していることが予想される。この他に、タイ国チュラロングコーン大学のパンヤ・チャルシリ博士を招聘し、タイ国バリスカン造山帯の泥質岩のイライト結晶度とその小〜微細構造についての検討を行った。
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