研究概要 |
本研究では,まず浜平層群を含む南部秩父帯の岩相層序や地質構造の見直しを行った.調査地域の南部秩父帯を乙父沢層,両神山チャート層,浜平層群に区分し,浜平層群を野栗沢層,両神層,大ガマタ層,川上層に区分し,御巣鷹山スラスト・三国山スラスト・両神山スラストの3スラストと諏訪山断層を認定した.また,本地域のイライト結晶度(IC値)は0.30から0.75の範囲にあり,三国山・御巣鷹山スラストでギャップを生じながら海側に向かって系統的に増加することが判明した.これらの構造は付加物質の埋没とその後のout-of-sequence thrust活動で形成したと推定される.一方,本地域の非対称変形構造を用いてスリップセンスを決定し,本地域のDeformation phaseをスリップセンスによりphaseIからphaseVに5区分した.phaseIからphaseIVは付加体内のスラスト運動,phaseVは付加後の横ずれ断層運動に対比される.上盤側のスリップセンスは古いものからtop to NSW-SW,SW,SSE-SE,SSW,Eである.これら5phaseの形成時期は,堆積年代や構造関係より中期ジュラ紀-前期白亜紀に限定できる.すなわち本地域の地層は中期ジュラ紀から前期白亜紀にかけて,in-sequence thrustやduplexによる堆積物の付加や重複により形成し,4-7km埋没した.その後,白亜紀前期に少なくとも2度の活動が確認されるout-of-sequence thrustにより上昇し,付加体はさらに厚層化した.付加物質はさらに陸側に移動し,横ずれ断層運動を起こした.本研究で明らかとなった内部構造は現世付加体で確認された付加体内部構造と対比ができ,スリップセンスより推定されるプレート移動方向も同時代のプレート運動と調和的である.
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