| 研究概要 |
古付加体は、かつては沈み込むプレートとその上盤のプレートの境界域に存在し、地震の巣であるところのプレート境界そのものを構成していた岩石を内包している可能性がある。地表の活断層における熱年代学的研究により、断層付近の試料が熱影響を受けていることが報告されていることを受けて(Tagami et al.,in press)、九州の四万十帯から試料を採集し、過去の熱異常を検出することにより、地震断層の探索を行った。
古江断層、延岡断層を横切るようなトラバースに沿って試料をフィッショントラック法を用いて分析した。それらの断層によって区分される各地質体のうちもっとも北側の槙峰ユニットは、年代が堆積年代よりも若く、なおかつ短縮したトラックを保持しており、堆積以後の熱影響を示している。一番南側の日向ユニットは、堆積年代より古い年代と短縮していないトラック長分布を保持し、このユニットがトラックの短縮に必要な温度に達していなかったことを示している。古江断層、延岡断層に挟まれた、北川ユニットは、得られた年代は堆積年代よりも古かったものの、短いトラックを有す。同堆積年代を持つ日向ユニットとの比較からこの短いトラックは堆積以後の加熱によるものと判断した。この結果は変成度やビトリナイト反射率に整合的であり、付加過程に伴う最高埋没温度を反映したものと思われる。また延岡断層の断層粘土からはその直上・直下(30cm以内)の岩石からは見いだせなかった熱影響が見つかり、しかもその熱イベントの年代が付加した直後である可能性があることから、かつてのプレート境界上の地震断層ではないかと思われる。
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