研究概要 |
本研究では,粘性の高いデイサイトの溶岩流を対象に,流動していた溶岩流の流動方向,重力による扁平化に加えて,固結した外縁部とまだ流動的な内部とのあいだのせん断応力などを,溶岩石基組織から検討することを目的としてきた.地質調査を行ったのは,雲仙普賢岳の1991-5年噴火溶岩,同火山の1772年噴火溶岩,約2,000年前の焼岳噴火で形成されたデイサイト質の溶岩,約2万年前の大山火山の溶岩,中新世の島根半島のデイサイト質溶岩などである.比較のために,富士山,伊豆半島,箱根火山,乗鞍岳などの安山岩ないし玄武岩質溶岩も調査した.とりわけデイサイト質溶岩は流出後も内部に高いガス圧をもちブロックアンドアッシュフローの火砕流発生のポテンシャルをもっている.その特殊性は,石基鉱物配列と同時に,発砲した気泡の形態によく現れていることが明らかとなった.つまり,通常の円弧状外形に囲まれた気泡ではなく,流動時溶岩流中の差応力のためにできた低圧部分でキャビテイションのメカニズムにより発生した不定形の「気泡」が特徴的に見られる.デイサイトの場合,通常の発泡ではなく,キャビテイションが重要な現象であることが指摘できる.以上の成果は,日本火山学会99年度秋季大会,AGU秋期大会(サンフランシスコ)などにおいて発表し,学術誌(Geology)に投稿した.
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