研究概要 |
浅間火山の黒斑期,仏岩期および前掛期の降下軽石を,小諸-軽井沢地域で調査・採集して,斑晶鉱物を分離した.すべての軽石の斑晶は主に斜方輝石,単斜輝石および斜長石からなり,チタン鉄鉱・磁鉄鉱を伴っている.カンラン石の斑晶は、黒斑期と前掛期の降下軽石に少量含まれる.角閃石は,仏岩期の一部(OKP-2)にだけ極少量見いだされた. 分離した斑晶粒の研磨薄片を作成した.硬石こうが斑晶として,または包有物として存在するか否かを調べるために,研磨オイルを用いて研磨薄片を作成した.ピナツボ火山およびEl-Chichonの降下軽石標本について,それぞれ同様に研磨薄片を作って,これらの硬石こうの産状と比較した.浅間火山には硬石こうが斑晶の包有物としても見いだされない.チタン鉄鉱・磁鉄鉱および輝石の斑晶をマイクロプローブ分析して求めた晶出温度は,ピナツボ1991噴火と比べて高い(950-1000℃).このために,マグマのイオウ溶解度が高くて硬石こうに飽和していなかったと考えられる. メルト包有物のイオウ濃度は,輝石・斜長石斑晶中では低く(<300ppm),カンラン石中では高い(<4000ppm).黒斑期と前掛期にはマフィックスマグマが大量のイオウを供給したと考えられる.仏岩期については,カンラン石斑晶がきわめて希なので,これらと同じ方法で比較できないが,今後はメルト包有物の加熱変化の実験の応用が有効である.
|