研究概要 |
島弧の火山がその数万-数10万年間の活動史を通じて,どれだけの量のイオウと塩素を供給するかを知るために,浅間火山の噴出物の斑晶メルト包有物の産状を検討して,そのイオウと塩素の含有量をマイクロプローブで系統的に分析した.浅間火山のマグマ供給系では,活動史の全期間(黒斑期,仏岩期,および前掛期)を通じて火山体下の浅部のフェルシックマグマ溜まりヘマフィックマグマが貫入して,混合したマグマが噴出した.主要な斑晶である斜長石,単斜輝石,斜方輝石,Fe-Ti酸化物はすべてフェルシックマグマ起源であり,メルトはフェルシックでイオウ濃度が低い.一方,マフィックマグマは無斑晶質で,わずかにカンラン石の斑晶を含む.カンラン石に包有されるメルトは,玄武岩-玄武岩質安山岩の組成でイオウ濃度がきわめて高く(≦3600ppm),塩素濃度は比較的低い.このマフィックメルト包有物(ガラス)の組成から,捕獲後の母体カンラン石の界面での成長による分別作用の効果を補正して,マフィック端成分マグマの組成を推定した.このマフィックマグマ組成(SiO_2〜51wt%)は,カンラン石にともに包有されるスピネルと,Alに富む単斜輝石との鉱物共生から,島弧の沈み込み帯でのマグマ発生域の初生マグマの組成を示していると考えられる.カンラン石のメルト包有物のイオウのKα特性X線のピークシフトから推定されるメルトの酸素フュガシティーは,ΔNNO=0〜2であり,海洋底のマグマのそれよりも2桁あまり酸化的である.この条件下ではイオウはSO_4^<2->としてマグマに溶解している割合が高くて,溶解度は非常に大きい.島弧の火山では,マントルの沈み込み帯のマグマが発生する場所から大量のイオウを噴火時に地表へ供給する可能性を示している.
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