研究概要 |
1、丹波帯中央部において、泥質岩中の炭質物の結晶度の測定を行ったが、花崗岩の近傍3kmより遠方では優位な差が認められなかった。この事は、炭質物の結晶度の測定からは、地下3km以深に貫入岩体が存在しない事を証明できない事を意味している。そこで、同じ試料を用いて、火成岩(マグマ)に由来すると考えられる泥質岩中の揮発性軽元素(B,F,S,Cl)の分布について検討を行った。測定は蛍光X線分析装置を用い、粉末ペレットを用いて行った。その結果、丹波帯中央部でこれらの元素濃度に高い地域が存在している事が判明した。これらの元素は火成岩貫入の際、母岩の上方へ拡散・移動し、特に泥質岩中の雲母・粘土鉱物中に固定されていると考えられ、深部に火成岩体が存在していることを示している。これらの元素の濃度を炭質物の結晶度と併せて解析する事で、貫入岩体の規模や貫入深度の推定も可能になると考えられる。 2、島根県匹見町の舞鶴帯中に、この地域の舞鶴帯の伸長方向に平行な西北西-東南東方向の断層に挟み込まれて関門層群が分布していることが判明した。この関門層群中には秋吉帯由来の石灰岩巨礫が含まれているものの、舞鶴帯に由来すると考えられる礫は認められないことから、本来"よそ者"であり、白亜紀前期における舞鶴帯に沿う大規模な横ずれ断層の存在が示唆される。 3、2000年10月に発生した鳥取県西部地震の震源付近の先白亜系が飛騨外縁帯の西方延長と考えられる大規模な剪断帯よりなっている事が確認された。この地域には北側から順に、船津花崗岩相当の片麻状花崗岩類、それらのカタクレーサイト帯、飛騨高山地方の上広瀬層に類似した火山性砂岩と安山岩からなる弱変成層、三郡変成岩類が分布しており、後の3者は東西の高角断層で接していることが判明した。
|