研究概要 |
1,伏在花崗岩の探査:付加体地域における花崗岩の伏在を検証する目的で,泥岩中の揮発性元素(B, F, Cl)のXRFによる迅速な測定ルーチンを確立した.この手法を用いて丹波帯の泥岩を測定し,亀岡北方などで高い揮発性元素濃度を示すことを確認した.これらの地域の地下には花崗岩が伏在していると考えられる. 2,先白亜系の地質構造: 京都府大江町地域では,舞鶴帯と秋吉帯下見谷層との間に幅2〜3mの3本の破砕帯を伴う大規模な高角断層が存在する. 岡山県鏡野町南西部では,舞鶴帯が三郡変成岩の上に低角ナップとして重なっている. 2000年10月の鳥取県西部地震の震源域である江府町地域の先白亜系は飛騨外縁帯の西方延長と考えられる大規模な剪断帯よりなっている. 島根県匹見町の舞鶴帯中に,西北西-東南東方向の断層に挟み込まれて異地性と考えられる関門層群が分布し,白亜紀前期における舞鶴帯に沿う大規模な横ずれ断層の存在が示唆される. 大分県の朝地変成岩は,変成作用の特徴,岩相構成および荷尾杵花崗岩に見られる変形構造から,領家帯の新期花崗岩の貫入する地帯に対比される. 3,総括:西南日本の地震基盤の地殻特性と活断層の分布の関係について検討し,西南日本内帯について以下の特徴を抽出した. 活断層系は幾何学的に厳密な意味ではブロック構造を作っていない。 中部-近畿東部では花崗岩地殻が付加体地殻を取り囲んでフレームワーク構造をなし,活断層は,花崗岩地殻内,もしくはその縁辺部に発達している. 近畿西部では花崗岩地殻と付加体地殻が西北四-東南東方向に伸びた帯状配列をなし,これに沿って山崎断層系などの活断層が分布している.また,舞鶴帯の帯状配列に沿った活断層系も認められる. 中国-九州北部地域の活断層は大部分が白亜紀後期に形成された古い断層の再動したもので,応力場の転換にともなう変位センスのインバージョンが認められる.
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