研究概要 |
南部九州の鮮新世大規模火山活動を引き起こしたマグマの成因とマントルダイナミクスについて,次のようなモデルを提案した. 後期中新世〜現在まで,南部九州の島弧型マントル(かつて沈み込んだ海洋底や堆積物,さらにウエッジマントルの破片などから構成されている)の下に,高温のfertileなアセノスフェアが存在した.アセノスフェアが上昇すると圧力が降下し部分融解がはじまり,プレート内アルカリ玄武岩〜プレート内ソレアイトマグマが生成される.プレート内アルカリ玄武岩マグマと島弧型マントルが反応すると高カリウム高マグネシア安山岩が生成される.同じようにプレート内ソレアイトマグマと島弧型マントルが反応すると低カリウム高マグネシア安山岩が生成される.つまり,この過程で,プレート内玄武岩マグマは,島弧火山岩が示すような化学的な特徴を獲得し,SiO_2のエンリッチチメントがおこる.このようにして,生成された高マグネシア安山岩マグマの分別結晶作用によって大量の安山岩が形成された. また,"島弧ソレアイト"類似の玄武岩〜安山岩は,島弧型マントルの一部を構成するかつてのウエッジマントルの破片が,上昇する高温のアセノスフェアか,マグマの熱によって融解されて生成されたマグマに由来すると考えられる.さらに,"アダカイト"様岩石は,島弧型マントルの一部を構成するかつて沈み込んだ海洋底("化石スラブ")が融解してできたマグマから導かれた. さらに,このモデルは,九州の後期新生代火山活動の特徴である,プレート内玄武岩と島弧玄武岩の共存,プレート内玄武岩と高マグネシア安山岩の共存,島弧玄武岩と高マグネシア安山岩の共存,低K安山岩と高K安山岩の共存,背弧側での島弧ソレアイトの活動などの特異な現象を説明するのに都合が良い.
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