研究概要 |
本研究2年次の実績は,概ね以下の内容にまとめられる。 野外の産状および岩石学的アプローチから,レッドヒルズ超苦鉄質岩体の形成過程は,(1)海嶺火成活動に密接に関連した溶け残りハルツバージャイトの形成,(2)メルトの通過に伴う溶け残りマントル物質とメルトとの反応によるダナイトの形成,に大別できる。(2)では,部分溶融メルトの通過による単斜輝石(CPX)や斜長石(PL)の晶出,および反応しきれずにブロック状に取り残されたハルツバージャイト等が認められる。MREE〜LREEの極端に涸渇したパターンを示すような全岩およびCPXの希土類元素(REE)組成から,上記のプロセス(1)のハルツバージャイトは,マントルの上昇流に伴った,よりfertileなマントルのガーネット安定領域からスピネル安定領域におけるpolybaricな部分溶融により形成された溶け残りマントル物質であると考えられる。さらに,岩体上部のダナイトを主体とする部分では,溶け残りマントル-メルト相互作用により,特異なREEパターンを持つCPXを伴うブロック状ハルツバージャイトの形成が行われたものと考えられる。ダナイトマトリックス中に散在するCPX-ダナイト,PL-ダナイト中のCPXはその産状から,ある種のメルトから晶出したことはあきらかである。これらのCPXのREE組成から推定される共存メルトは,海嶺性玄武岩のものとは明らかに異なる。このメルトはおそらくマントルの部分溶融によって発生した分別溶融液を代表しているのであろう。また,マトリックスのダナイト中のCPXのMREEで凸型のパターンはマントル-メルト相互作用の産物であると考えられる。このような多様な分別溶融メルトおよび反応生成メルトが最上部マントル-地殻漸移帯付近で集積されて最終的に玄武岩質マグマを形成するものと思われる。
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