研究概要 |
本年度は主に新第三紀の三崎層群竜串層および北但層群村岡累層を対象に,浅海域でのストーム堆積作用とその地層記録への保存能について調査研究を行なった。特に三崎層群竜串層において新しい知見が得られた. 三崎層群竜串層下部は砂岩泥岩互層部と厚層砂岩部の2つの構成要素からなる.両者ともに砂岩の内部堆積構造としてハンモッキー斜層理を有しており、ストーム堆積作用が卓越する浅海域で堆積したとみなされる。砂岩泥岩互層部は細粒懸濁物が沈積する場に,まれに来襲するストームが砂を運搬・堆積させて形成された。このような場に海底砂州が発達し、厚層砂岩部を形成していった。厚層砂岩部にもハンモッキー斜層理が卓越し、ストーム作用が砂州堆積体の形成に大きく関与していたことがうかがえる。しかし、厚層砂岩部の砂の集積,つまり砂州の成長発達は本質的には河口から流れ出す河川流、もしくは河川流と潮汐流の複合によるものであり、ストームは必ずしも砂の主要な運搬・集積には関わっていなかった可能性が高い.河川流によって集積した砂州堆積物はストーム時の強い波浪作用によって再動され、ハンモッキー斜層理が作られたとみなされる。砂州の成長とともに砂州上での河川流の強さは衰え、また砂州の成長によって水深が浅くなるほどストーム波浪による海底での振動流が強くなる。そのため,厚層砂岩部にはストーム作用の記録が選択的に保存されていったと考えられる。 従来,ストーム砂岩層は2つの堆積時相,(1)ストームに起因した強い流れによる海浜から沖合への砂の運搬,(2)ストーム波浪による強い振動流のもとでの砂の堆積,を反映しているとみなされてきた.しかし,三崎層群竜串層の浅海砂州堆積物は,ストームが砂の主要な運搬に携わらなくとも,ストーム作用の記録が卓越した堆積体が形成される得ることを示している.
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