研究概要 |
厚歯二枚貝は、ジュラ紀の終わりから白亜紀の終わりにかけて生きていた二枚貝である。この二枚貝には多くの科が含まれるが、初期のものをのぞいて大部分のものが円錐形、あるいは羊の角状など二枚貝としては特異な形態を持つ。 このような形態の特異性のもつ意味について考察することを目的として、本年度は、特にHipprites oppeliについて、詳細な切片の作成および双眼顕微鏡下での観察を行った。この二枚貝の殻には、分岐した毛細管状の管状構造が見られる。この分布状況について調べた。また、現生で類似の生態をもつSpondylus、とりわけ殻内に空隙をもつことで知られるミズイリショウジョウ(Spondylus varius)について、生態観察の目的で沖縄県国頭郡本部町瀬底および備瀬海岸において調査を行った。 申請者は、従来より動物と藻類の共生関係に興味をもち、特に二枚貝において、共生関係成立にともなってエネルギー源の光りを有効利用するために貝殻の形態が変化することなどを現生の二枚貝について調査してきた。そして、厚歯二枚貝についても、同様の共生関係が推定されていることもあり、本研究を進めた。現在のところ、この説の是非を決定するに足りる証拠を得るまでには至らなかった。今後も継続して研究を進める必要がある。 なお、厚歯二枚貝の教科書として有名なCestari, R and Sartorio, D(1995)によるRudist s and facies of the Periadriatic Domai (Agip, S.p.A., S. Donnanto Milanese)の翻訳について校正を終えつつあり、その出版のための準備を進めている。
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