研究概要 |
研究の基礎となる野外調査を山口県美禰市の宇部興産(株)伊佐セメント工場内にて延べ31日間行ない,定方位の石灰岩試料計270個を採集した. 野外調査では,海水準低下期に形成された古洞窟と洞内堆積物,溶食・浸食面などの空間的広がりと,海水準上昇期に形成された溶食・浸食面上の有孔虫(フズリナ)砂の空間的広がりなどを把握した. 室内作業として,定方位の石灰岩試料の切断・研磨を行ない,石灰岩堆積時の走向・傾斜を決定し,調査地域の地質構造を明らかにした.さらに石灰岩試料中のフズリナ化石種を薄片下で識別し,フズリネラ・イトイ,ビーダイナ・アキヨシエンシス,シュードフズリネラ・ヒデンシス,プロトリチサイテス・モンチパルス帯などに下位から上位に年代区分を行なうとともに,いくつかの地点からはアンモノイド化石を剖出して,これまでのところ12種を識別した.これらアンモノイド化石種の組み合わせからは,その層位が北米内陸地域のアトカ,デモイン,ミズリー階の特定の層位に対比されることが判明した. これまでのところ北米内陸地域のデモイン・ミズリー階境界に相当する層位にもっとも大きな海水準低下期があり,約50mであることが求められた.彼の地域における知見ともよい一致と見做し得る. それよりも前後の海水準変動の解析を今後調査地域を拡大して,進めていく予定である.
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