研究概要 |
研究の基礎となる野外調査を山口県美禰市の宇部興産(株)伊佐セメント工場内にて延べ27日間行ない,定方位の石灰岩試料計138個を採集した. 野外調査では,前年度に続き海水準低下期に形成された古洞窟と洞内堆積物,溶食・浸食面など空間的広がりと,海水準上昇期に形成された溶食・浸食面上の有孔虫(フズリナ)砂の空間的広がりなどを把握した.さらに下位の層準にも同様な不整合を発見した. 室内作業として,定方位の石灰岩試料の切断・研磨を行ない,石灰岩堆積時の走向・傾斜を決定し,調査地域の地質構造を明らかにした.今年度調査した範囲は走向はほぼ東西で,北へ急傾斜していることが判明した. 石灰岩試料中のフズリナ化石種を薄片下で識別し,ビーダイナ・アキヨシェンシス,シュードフズリリネラ・ヒデンシス帯にはヒコロコジューム属と葉状石灰藻が急激に増加してくることも判明した. いくつかの地点にはアンモノイド化石がかなり密集して産出するが,これらは狭い谷状の地形をなす部分であり,礁斜面から礁原へと続くチャネル内に堆積したことが判明した. 今年度調査した範囲でも前年度判明したのと同様に,北米内陸地域のデモイン・ミズリー階境界に相当する層位にもっとも大きな海水準低下期があり,約50mであることが求められた. それよりも前後の海水準変動の解析を今後調査地域を拡大して,進めていく予定である.
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