研究の基礎となる野外調査を秋吉台西台の南西部で延べ23日行ない、定方位の石灰岩試料82個を採取した。アンモノイド化石を含む石灰岩試料も多数採取した。室内作業で定方位の石灰岩の切断・研磨により堆積時の走向・傾斜を求めるとともに、石灰岩中のフズリナ化石の薄片作成とアンモノイド化石の剖出を行なった。 これらの結果、秋吉台西台の南西部では秋吉石灰岩層群の上部石炭系部分は走向はほぼ東西で、北に急傾斜し、フズリナ化石帯のフズリネラ・バイコニカ帯の一部とシュードフズリネラ・ヒデンシス帯とプロトリチサイテス・モンチパルス帯の境界付近に溶食・侵食面上にフズリナの密集する有孔虫砂が重なる不整合が発達することが確認された。これらの不整合に伴って、不整合の下の石灰岩中のアンモノイド殻の内部には通気帯粘土が充填していることが明らかとなった。前者の不整合に示される海面低下はわずかに数メートルであるが、後者の不整合の示す海面低下は50メートル以上になることが判明した。さらにこの不整合面より数メートル下にはかなりの規模の古洞窟が形成されており、この海水準低下期に関連があると推測されるが、まだ確証が得られていない。 調査地域で識別された最も顕著な海面低下期が標準地域のモスコー世/カシモブ世境界または北米内陸地域のデモイン世/ミズリー世境界に厳密に相当するかどうかは得られたアンモノイド化石群の検討・対比によることが重要となる。現在観察される石炭系部分の上位には宇部興産(株)伊佐セメント工場内で、さらに大きな海面低下が起ったと考えられる露頭が散在するが掘削がまだ始まったところで、今後も観察を続ける必要がある。
|