研究概要 |
南西諸島の化石および現生陸棲脊椎動物群の形成過程とその起原を探るのが本研究の目的である。近年,沖縄島北部の今帰仁呉我山地区において,琉球石灰岩の下位の地層から脊椎動物化石包含層が発見され,予察的な発掘調査によって,南西諸島に多産する古型シカ類2種の先祖型が発掘され注目されていたが、本年度の発掘調査によって、これら古型シカ類化石の他に、カメ類、ヘビ類、齧歯類のレオポルダミスさらに小型の爬虫類、両生類の化石多数を発掘した(今泊-赤木又脊椎動物化石群).また、この動物化石群の地質年代を決定するために、化石包含層に含まれる軽石のフィッション・トラック年代の測定を行った結果、150±0.3Maという値が得られた。この結果,南西諸島への古型シカ類の大陸から渡来は,更新世前期に行われたこと、及びこの動物群は当時形成されたトカラ海峡(渡瀬線)によって、大隅諸島の北琉球へは渡来しなかったことが明らかとなった。今泊-赤木又脊椎動物化石群の起源について研究を進めた。その結果、この動物群は、齧歯類や古型シカ類メタセルブルスの存在によって、中国は揚子江下流域の安徽省繁昌県で近年発見され、礫器を伴う癩痢山の動物群集(2〜2.5Ma)に起源があることが判明した。 今年度は更に、琉球石灰岩の裂罅堆積物から豊富に産出する更新世末期の脊椎動物化石群のうち、シカ類のリュウキュウジカ(メタセルブルス)や大型リクガメの一斉絶滅の原因を探るための手段として、タンデトロン加速器質量分析計を使った炭素14年代の測定を継続中である。
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