平成11年7月に川平湾口の水路底に水温・塩分計を設置し、同年10月、12月に電池とメモリーパックの交換を行った。これにより川平湾口水路底の水温・塩分の変動パターンを明らかにした。これは現地の水産試験場における諸研究にも寄与するものである。 平成11年7月に川平湾口の大型種Lithophyllum pallescensについて、アリザリンレッドを用いたタイムマーキング法と移植法による現地での成長速度の測定を開始した。来夏には結果が得られる見込みである。また同時に開放系水槽を用い、アルカリ度法により、Lithophyllum pallescensの有機炭素・無機炭素の生産量測定を試みたが、熱帯低気圧の停滞などの悪条件もあって、誤差の大きな結果となった。生産量の測定は、ごく最近から、閉鎖系で行う方がより良い結果を得られると考えられ始めており、今後、閉鎖系による測定に手法を移行させるべきであると考えられた。 以上の諸成果をさらに拡大し確かなものとするために、平成12年3月末に、閉鎖系水槽による有機炭素・無機炭素の生産量測定を試み、また水温・塩分計の電池とメモリーパックの交換を行う。 東北大学その他の研究機関に保存されている分類・生態学的文献の検討を行い、サンゴモに関する研究史と既に記載されている種のまとめを行った。さらに琉球大学に保存されている沖縄島近海陸棚産のサンゴモ球の生体液浸標本から、Sporolithon属2種の生体の存在を確認した。また、東北大学に保存されている更新世化石サンゴモ球標本の検討を行った。これにより、現世陸棚サンゴモ球表面の生体サンゴモ群集とそれらの内部の遺骸サンゴモ群集および更新統琉球層群中の化石サンゴモ球の化石サンゴモ群集とが同一であることが、疑いないことになった。
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