研究概要 |
本研究の主目的は,放散虫化石群集の解析を通して,ペルム紀-三畳紀のパンサラッサとパレオテチスの両海洋の特性と関連性を明らかにし,さらに両海洋におけるペルム紀-三畳紀の古海洋変動の実態を解明することである.平成11年度は,西南日本の美濃帯・足尾帯・秩父帯において野外地質調査を実施し,試料採集を行った.これらの試料及び既採集の西南中国雲南地域,南中国貴州地域,南中国欽州地域の試料を化学薬品処理を行った.さらに摘出した放散虫化石を顕微鏡デジタルカメラシステム(本年度購入の設備備品)を用いて観察し,放散虫化石群集の特性を予察的に解析した. 西南日本の試料は,すべてジュラ紀付加体中のチャートを主とする珪質岩類であり,パンサラッサ海の低緯度深海底堆積物とみなされる.一方,西南中国雲南地域の試料は,揚子地塊の西南側の昌寧-孟連帯と呼ばれるインドシナ変動帯からの珪質岩類であり,パレオテチス海の中央部堆積物とみなされる.南中国貴州地域の試料はパレオテチス東縁の揚子地塊上の浅海成堆積物であり,欽州地域の試料は揚子・華南地塊とカタイシア地塊間のパレオテチス/パンサラッサ境界域の遠洋性堆積物とみなされる. 今回,各試料からのペルム紀放散虫化石群集の解析を予察的に行った.その結果,パンサラッサ海の低緯度深海底堆積物(西南日本)からの放散虫化石群集は最も多様性が高く,一方,パレオテチス東縁の浅海成堆積物(貴州地域)からのものは最も多様性が低く,パレオテチス中央部堆積物(雲南地域)及びパレオテチス/パンサラッサ境界域遠洋性堆積物(欽州地域)からのものが中間の多様性を示すことが明らかとなった.これらの予察的な解析結果は,パンサラッサとパレオテチスの古海洋環境における相違と関連性を示唆するものと思われる.
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