研究概要 |
古第三紀長鼻類の臼歯の咬耗面を観察した.その結果,Numidotherium,Moeritheriumなど長鼻類の系統でも最も初期の分岐を代表する分類群の咬耗面は,バクなどに代表される有蹄類の2稜性臼歯に見られる咬合面と良く類似していることが分かった.また中新世以降のDeinotheriidaeにも同様の咬耗面が見られた.したがって,これら長鼻類の中でも初期の分岐に属するものの咀嚼機能は,バクなどに代表される有蹄類2稜性臼歯のアナロジーで十分に解釈することができる.これに対して,中新世以降現在まで繁栄して入るゾウ上科では,その最も初期のものであるPalaeomostodonおよびPhiomiaにおいてすでに,このグループ独特の咬耗面が発達していることが明らかとなった.上記の臼歯咬耗面の分析結果は頭蓋の形態と照合されなければならない.このため,化石および現世長鼻類頭蓋の三次元計測データの収集を行う必要がある.その準備の一つとして,頭蓋を含むタイ産長鼻類化石のクリーニングを行い,ほぼ完了した.また,東北大に保存されているStegolophodonの頭蓋に付いている臼歯の復元をレプリカで行った.これらの化石の他に,エチオピア産長鼻類頭蓋化石の計測用の写真を収集した.これら計測写真から三次元計測データを取り出す手法を検討した.当初ローライ社の写真計測システムを使うことを考えていたが,より安価で同等の結果の得られるソフト,フォトモデラープロが出ているのを購入することとした.現在までのところ良好な結果が得られているので,今後このソフトを用いて現在収集している計測写真を解析する予定である.
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